部 分 構 造 論 理 の 研 究


はしがき


本研究は, 「部分構造論理の研究」の表題のもとに, 平成10年度から平成11年度 にかけての二年間にわたり, 文部省科学研究費補助金の交付を受けて行われた。 本研究の目的は, カテゴリー文法, relevant 論理, BCK 論理, 線形論理などの部 分構造論理の性質を明らかにすることであった。 この「はしがき」の末尾の「研究発表」にあるように, 研究分担者たちの活発 な研究活動により, 部分構造論理の性質は明らかになりつつある。 ここでは, 研究代表者の古森による2つの成果について述べる。

第一のものは P-W 問題のラムダ計算による解決である。これはもともと, 永山操の P-W 問題の Genzten 流体系による研究とほぼ同時期に, 廣川により 始められたものである。永山の方法で 1993 年の夏に永山と古森は P-W 問題を解決するが, 廣川の方法では上手くいかなかった。 古森は 1994 年 12 月 5 日の NSL'94 (Workshop on Non-standard Logic and Logical Aspects of Computer Science (金沢)) の講演で, 廣川の方法に 永山の方法を取り入れれば容易にラムダ計算による解決が得られるとの見解 を述べた。廣川はそれを実行したが, 古森が思っていたほど簡単ではなかった。 しかし, 廣川は根気よく研究を続けラムダ計算による解決をほぼ達成した。 最終的には, 永山が証明の吟味をして論文にまとめた。

第二のものは鹿島亮による古典論理の自然演繹の体系を古森が少し変えた体系 についてのものである。この体系についての現在までの最もよい結果は, 鹿島に よる「与えられた任意の証明図を部分論理式特性をもつ証明図に変形すること ができる」というものである。唯一の結論を持つ古典論理の自然演繹の体系で 正規形が部分論理式特性を持つというものは知られていなかったので, この結果は そのような最初の体系を示したことになる。しかし, この変形規則は Church-Rosser 性を持っていない。この体系の望ましい性質を保ったまま Church-Rosser 性を持つ ように変形規則を作り上げることと, その変形規則の計算規則としての 意味(Catch/Throw メカニズムとの関連など)を明らかにすることは非常に興味深い 残された研究課題である。

2000 年 4 月 10 日
古森 雄一

研究組織
研究経費
平成10年度 2,200千円
平成11年度 1,600千円
3,800千円


研究発表
(1)学会誌等
(2)口頭発表


目次 (紙に印刷された報告書の目次です)
モデル検査アルゴリズムの検証について 山本 光晴 他著 1
証明とモデルを生成するインターネットプルーバー 廣川佐千男 他著 5
A lambda proof of the P-W theoremSachio Hirokawa, Yuichi Komori et al. 11
A Natural Deduction for Classical Logic, in which there exists a proof with the Subformula Property Yuichi Komori 25
Lambek Calculus: Recognizing Power and ComplexityMakoto Kanazawa29
Infiniteness of Proof($\alpha$) is Polynomial-Space CompleteSachio Hirokawa 43
GUI for Geometric Inference Engine on InternetSachio Hirokawa et al. 53
A Binary-Conclusion Natural Deduction System Ken-etsu Fujita 55
Multiple-Conclusion System as Communication Calculus Ken-etsu Fujita 85
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