2012 年度ゼミ(卒業研究)

古森 雄一

ゲーデル(1906-1978)が彼の完全性定理と不完全性定理を証明したのは 20 代の前半のことです。君たちの大部分はまだ 20 代の前半でしょう。 君たちはゲーデルと同じように 20 代のうちに後世に残るような定理を証明する 可能性を秘めています。博士後期課程までの進学を考えると 6 年間という自由に 数学や計算機科学の研究に没頭できる時間が与えられているのです。

最初に博士後期課程までの進学を考えていても, 途中で気が変わることも 挫折することもあると思います。しかし, 6 年間で後世に残るような仕事をするという目標 に向かって努力をしたことは無駄にはなりません(たとえ学部卒で就職するにしてもです)。 努力の結果も大切ですが, それにもまして努力する過程が大切なのです。

スマリヤンという論理学者がいます。ゲーデルの不完全性定理 に関係した一連のパズルの本を著し, 論理パズル作家としても有名です。アマゾンなどで 「スマリヤン」で検索してみてください。彼はプロのマジシャンだったのですが, 40 才を過ぎてから数学を本格的にやりたくなり, どの分野がいいかと調べたと ころ予備知識が最も少なくてすむ数学基礎論を選んだとのことです。

現在では, 広い意味での数理論理学は大きな広がりを持つようになっていて, 分野が違う と話が通じなくなっています。最先端に立つにはかなりの予備知識を必要とするように なっている分野もあります。しかし, 予備知識をあまり必要としない分野もあります。

数理論理学の面白さは, 数学の基礎の確立のため発展したものが計算機科学や数学にも 豊かな応用があるということです。直観主義論理が好例です。直観主義は, 素朴集合論から 矛盾が出てきたとき, それに対処する数学思想の一つです。直観主義論理は直観主義の考え を形式化したものです。それが仕様から計算機プログラムを作るという理論の基礎理論とな っています。

このように面白い数理論理学の学習と研究を私と一緒にしていこうという人は, 私のゼミに来て ください。また, 2012 年度には修士の学生が二人ますので, 彼と彼女も4年生のゼミに参加し ます。2012 年 3 月 には群馬県草津町でゼミ合宿(自由参加)も行う予定です。

ゼミでやる内容は, 次のキーワードのいくつかを選んで, それについての適当な本(情報数学I の 教科書の第 4 章も候補の一つです)か論文を相談して決め輪講を行います。これをやりたいとい う提案がありましたら申し出てください。

ラムダ計算, 部分構造論理(部分構造論理への招待(数 学セミナー(日本評論社)2003.1)), 直観主義論理, ゲーデルの不完全性定理, カテゴリー理論

ゼミについて質問がある人はメール(komori@\alpha (\alpha に math.s.chiba-u.ac.jp を代入し て使ってください))で遠慮なくいつでも質問をしてください。 また, 12 月 20 日, 1 月 10 日, 17 日 (いずれも火曜日) の 14:30 から理学部 2 号館 6 階 616 号室で大学院のゼミを行っています。4 年ゼミについての質問をその最中に受け付けています。


ここには日本の数理論理学者の Home Page があります。 色々な Home Page がありますので楽しんで下さい。


2011 年 12 月 13 日に作成

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